6月 272012
 

読んだ本についてどう書いたらいいか? どう本を選べばいいのか? 考え続けて半年が過ぎた。答えがみつかるかもと手にとったのが、都甲孝治による、翻訳のない外国語文学の「記録」だ。

「言語の肉体的肌触り」を求めて、「日本語の外」へと、評価の定まっていない作品を旅する冒険譚だ。「当たり前の環境からずれていく運動を世界文学への試み」と定義して選んだ作品は、アメリカ合衆国に関係が深い。

九・一一という事件から始まって「英語帝国主義」が猛威を振るいながらグローバリゼーションを推し進めた新世紀にあって、「社会からの疎外感」とともに生きる人は同時多発的に世界中で増殖している。言葉や文化の違いで「人間扱いされない」移民の国・アメリカでは尚更だ。例えば、ドミニカ共和国からアメリカに移民した作者のスペイン語混じりの英語で書かれた作品や、ボスニア出身の作者が世界に散ったボスニア人のために英語で書いてアメリカで出版される作品など。

人種や文化を越境して、他者への想像力を鍛えていく強さに満ちていることが文脈から伝わってくる。母国語でない言葉を使い、内包する環境を武器に新世界で表現する書き手の文学における「試み」は「自分を人間として認めさせる闘い」なのだ。言語による身体的なインパクトに注目する視点で選んだ作品は、文化的背景による「当たり前」の思考回路を打破し、より根本的な人間同士の理解へと誘う。

都甲の冒険へ参加するには、お仕着せの思考パターンも読解パターンも捨て去る必要がある。もはや書評ではない。この冒険譚が実際の本より刺激的だったらどうしよう。

Momoe Melon

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